江波戸武士の悩み相談
心理カウンセラー 江波戸武士
誕生日:1975年3月20日
出身地:東京都練馬区
学歴:ゴールデンゲートユニバーシティー、アメリカ大学院で修士課程修了(心理学)
経歴:心理カウンセリング、コーチング、留学生カウンセリング、お年寄りのお手伝い、ホームレスにご飯を配る活動など。
===============================
自分が本当に感じた気持を誰にも言えずに、心の奥底に隠してしまったことはないでしょうか?子供のとき親に感じたネガティブな感情や心の傷など、今まで表に出すことなく自分だけの秘密にしておいたことがあったら、それははき出してしまいましょう。表現することなく抑え込んでしまった感情は、あなたがフルに才能を発揮し、自由に生きることを邪魔することがあります。
いじめられた経験があるけど、仕返しが怖くてそのことを誰にも言えずに1人で悩んでいた。親の暴力の被害にあっていたけど、「誰にもそのことを話すな」と言われていたなど、辛くて助けて欲しいと思っても周りに助けを求められない環境というのは多くあります。
自分が感じたことを表現できないと、私達の自己評価は下がってしまいます。「自分は価値のない人間だ」と、無意識レベルで感じ始めます。不安や恐怖などを感じても、それを聞いてくれる人がいないと、そのネガティブな感情を自分自身で対処しなくてはいけなくなります。それは、まだ問題解決能力が備わっていない子供にとって、あまりにも大きな負担となります。結果、その苦しみから解放されようと、「こんなことを感じる自分がおかしいんだ」と自分自身の気持ちを否定するようになってしまうのです。
私の父親はお酒を飲んで暴れることがよくありました。私は子供のころ、何度となく酔っ払った父親に殴られた経験があります。父親は何かしらの理由をつけて殴ってくるのですが、子供の私にはその理由がまったくわかりませんでした。子供ながらに「絶対に悪いことをしていない」という確信がありましたので、どんなに殴られても決して謝りませんでした。なので、私は鏡を見ても自分の顔だと分からなくなるぐらいまで殴られました。
両親はこの事実を誰にも知られたくありませんでした。だから、顔の腫れがひくまで学校を休まなくてはいけませんでした。子供の私も何となく、「このことは誰にも言ってはいけないんだな」と感じていたので、学校を休んだ本当の理由は誰にも言いませんでした。自分の感じた悔しさを抑え込めば、全てがうまくいくと判断したのです。
子供の頃の私はいつも親に怒りを感じていました。誰にも本当のことを言えないという孤独感も感じていました。しかし、私は自分が本当に感じていることは言わない方がいいと思いました。「本当のことを言ってしまうと、周りの人が困ってしまう」と感じたからです。「何があっても誰にも言わない」「全て自分で解決しよう」と子供ながらに決断しました。そして、そんな自分の強さに誇りを感じていました。
それからの私はどんな問題を抱えようと、誰にも相談することはありませんでした。「自分のことは自分で解決する」「他人に相談したら迷惑をかけてしまう」という思いで生きていました。私は自分に自信があると思って生きていました。
しかし、30を過ぎたあたりから突然、私の精神状態に変化が現れました。理由が分からない不安に襲われるようになったのです。毎日が「このままでいいのかな?」という恐怖で埋め尽くされるようになってしまいました。そのときまで私は、強くて自信があり、決断力があって自立した人間だと思っていました。だから、もちろん、それまでの人生に後悔などないと確信していました。
「この気持はどこから来るのだろうか?」と、長い間考えました。そして、答えは私の子供時代にあると分かりました。私は子供の頃から周りの大人に気を遣い、自分が心から求めることを言わない習慣がついていました。欲しいものがあっても値段が高いと、「親に負担をかけないように」と安い方を選んだりしていました。なぜなら、私の両親はいつもお金のことでケンカをしていると知っていたからです。
何をするにも私の判断基準は、「親の精神状態を乱さない」ということでした。私は「本当の自分」を見せないで生きてきたのです。私は自分の存在を消すことによって、家族の安定を保っていました。
私は長い間、「自分が心からやりたいこと」「自分が心からなりたい自分」を無視して生きてきました。自分のニーズより他人のニーズを優先してきた結果、私の自己評価はズタズタになっていました。自分を無視するということは自分を否定すること、つまり「自分は価値のない人間だ」と言っているのと同じことです。それでは自己評価が下がるのは当然のことです。
それからの私は自分の自己評価を上げることに専念してきました。自己評価を上げるには、自分自身を大切にする必要があります。それには、自分が心から望んでいることを叶えていくことです。しかし、長い間、自分の欲求を抑え込んで生きてきた私にとって、自分が心からやりたいことを見つけることはとても難しいことでした。なぜなら、何をするにも、「こんなことをしたら怒られてしまう」とか、「こんなことをしたら周りにバカにされてしまう」などの不安が出てくるからです。
しかし、何か新しいことを始めなければ、それまでと同じような人生が続いていきます。そこで私が取った行動は、「ありのままの自分を出して、認めてもらうことによって自信をつけていこう」というものでした。私は絶対にジャッジしない安全な人(カウンセラーを含む)を選んで、自分の過去を話すようになりました。私は子供の時から抑え込んできた「弱い自分」「怒っている自分」「褒めて欲しい自分」など、自分の全てを正直にシェアできる関係を築いていきました。
自分が本当に感じていたことを話すということは、大したことではないように思うかもしれませんが、実はもの凄く効果があります。私はそれをすることによって、自分に対する罪悪感や、「自分はどこかおかしいのではないか?」などというネガティブな感情から解放されました。他人に話すことによって、心の中に乱雑に抑えこまれていた感情が整理されるのです。なぜなら、他人に自分を話すということは、自分を客観的に見るということだからです。
怒りや孤独感などのネガティブな感情も自分の一部です。だから、「こんなことを感じてはいけない」と否定するのではなく、大切な自分の一部だと認めてあげることが必要なのです。他人に話すことによって、それが可能になるということです。
あなたも過去の私みたいに、「こんな自分は許せない」などと思ってしまうことはないでしょうか?他人の目を気にして、自分の本音にフタをしてしまうことはないでしょうか?自分のことより他人のニーズを優先してしまう癖はないでしょうか?「自分の本当の気持を伝えたら嫌われてしまてしまう」という不安はないでしょうか?
もしそうなら、少しずつでも「ありのままの自分」を解放していくことをオススメします。どんなことを言っても絶対に自分のことを評価しない安全な人を選んで、「ありのままの自分」を出していく練習をしていきましょう。自分の本当の気持ちを抑え続けても消えてなくなることはありません。むしろ、それは膨張し続け、受け入れられるまで不安という感情を使ってあなたを苦しめてきます。良いところもダメなところも全て自分だと受け入れることで、あなたは楽になり自由を感じられるようになるのです。